BARism#190905

偉大なるローカルカクテル

地域限定の名物カクテルというものがある。さも世界中で飲まれているように思われるが実は特定地域に限られる、というものである。最近、カクテル愛好家の中で注目されている『雪国』というカクテル。クラウドファンディングで製作された映画が火付けなのだが、映画の中では世界のスタンダードを意識させるように作られている。残念ながら実際は、日本国内に限られた話でなのである。しかし、一杯のカクテルで映画が出来てしまう程、偉大なるローカルカクテルというものはストーリーに富んでいる。

横浜にも偉大なるローカルカクテルがある。『ジャックター』と『イエローマン』である。どちらもハイプルーフラムを使ったパンチ効いたカクテルで、戦後、外国人の多かった横浜の事情も反映しているのだろう。テキーラがメジャーになる前の話であるから、こういったカクテルを飲み干すことが、横浜の男にとってはひとつのステータスであったのかも知れない。『ジャックター』は在日アメリカ人が創った。現存する老舗BAR“ウィンドジャマー”の生まれである。ロンリコ151にサザンコンフォートとライムジュース。サザンコンフォートも今のように低アルコール化した腰抜けではなかったので、かなり強いカクテルであった筈である。その継承的な位置付けで『イエローマン』は生まれた。生みの親はバーテンダーではない。伝説的なモーターサイクルクラブ“ケンタウロス”の総長、飯田繁男という。小振りのタンブラーにロンリコ151とグレープフルーツジュースを一対一。このカクテルが生まれて40年近く。続く偉大なるローカルカクテルというものは登場していない。

そこで、バー・ペイネでは『ジャックター』を父とし、『イエローマン』を兄 とし得るカクテル製作に挑んでみた。『スウィングマン』という。由来はスウィングJAZZから。ケンタウロスの創設が1964年、イエローマンの誕生が1980年代初頭。奇しくも、“スウィングの王様”ベニーグッドマンの来日と同時期にあたる。戦後横浜の復興期を、バイク文化とJAZZ文化で彩ったふたりの立役者を繋いで命名した。どうだろう。試して頂けたら幸いに思う。男なら、是非3杯セットで。もしも気に入って頂けたならば、詳細なレシピもお教えしたい。(西宮聖一朗)

Peynet’s Schedule on Sep.

▪️店休日

18日(水)

▪️4th Friday Night Concert

27日(金)21:30start

Piano / Hitomi Tanisaka

& Guest Saxophonist

【Music Charge】1,500