サザンカンフォートの憂い、145年前のクラフトリキュールニューオーリンズ発祥の人類にとって最も重要な文化的遺産を挙げるとしたら、『JAZZ』と『サザンカンフォート』だろう。近年、酒類業界ではクラフト物が流行っている。これは、上等で無難なものに飽きた市場と、禁酒法時代への憧れから生まれた流行、或いは、ウィスキーより短期間で商品化したい企業の色気ない陰謀であろう。企業だけでなく、バーテンダーが自分の店の為の独自の酒を作ったりもする。そんなクラフトというものは過去にもあった。1874年、ニューオーリンズのバーテンダー、マーティン・ヘロンがバーボンにフルーツやスパイスを添加してサザンカンフォートを作り出した。彼はミクソロジストの先駆けで、自作のサザンカンフォートをベースにカクテルを考案し売り出した。『セントルイス・カクテル』という。後にジャニス・ジョプリンが好み、ステージでも携えていたという話もサザンカンフォートの人気に一役買っているだろう。共に、荒い口当たりの中に感じる何処か甘美な芯のようなものがお似合いのコンビである。27歳でヘロイン中毒で死んだジャニスも、長生きしたならば丸くなっていたのだろうか。サザンカンフォートは、当時のジャニスが飲んだら失望するだろう程に、今は柔らかくなっている。元々は50度でバーボンから作られていたサザンカンフォートは、今や21度の中性スピリッツが主流になってしまった。市場のニーズと企業の思惑が一致した結果ではあるが、文化の破壊のように思えてならない。誰かが『JAZZは死んだ』と言っていたが、サザンカンフォートも死んでしまったのかもしれない。BARは時代遅れで良い。こういった文化を守ることができる数少ない場でもあるからである。だから敢えて言いたい。デートのツレに、“飲み易いもの”を薦めようとする紳士諸君。どうかそんな無粋で初心者染みたオーダーをしないでおくれ。そんなものは居酒屋かカジュアルバーに放っておけば良いのだ。人生、少しの苦味は必要だろう?それを共に味わえないようならきっと上手くはいかない。折角BARに来たのなら、骨太の本物の酒で試してみては如何だろう?心地良さだけを求めたならば、低アルコール化の先に酒の文化は失われてしまうだろう。サザンカンフォートを死なせてはならない。(西宮聖一朗)
【BARism -Tiki Cocktail vol.1 -】
【BARism -Tiki Cocktail vol.1 -】
『ティキカクテル』とは?
曖昧なカテゴリーである。ひどく適当。
イメージでいうならば、いわゆるトロピカルカクテルといったところである。しかしこのトロピカルカクテルというのも実は日本の造語で、カクテルブームとハワイブームが合わさった頃に生まれた言葉であり、ワールドワイドな汎用性はない。海外ではエキゾチックカクテルと表現したりするそうである。
そこでまずティキという言葉から紐解く
そこでまずティキという言葉から紐解くと、文化に見られる女神の名前に由来する。そこからポリネシア文化を扱った事物の総称として使われるようになった。カクテルだけの言葉ではないので適当になってしまうのも致し方ない。海岸近辺でハワイムードな内装で適当な混ぜ物をつくってティキバーを名乗る店は多く、残念ながら、それでも実際にティキなのである。
しかし、我々のいうバーとは、歴史と技術に裏打ちされた格式のあって欲しいところ。
バー通いの好む話題に切り替えよう。
ティキバーの祖といわれる人物がいた。通称、ドン・ビーチという。1933年、米ハリウッドで『ドンズビーチコンバー』という店を開いた。10余年にわたる禁酒法の明けた頃で、世間は酒を求めた。そういった時勢、ドンズビーチコンバーは日常からの逃避と強いラムの酒をコンセプトに繁盛した。1939年のニューヨーク万博でドン・ビーチ創作の『ゾンビー・カクテル』が発表された。このカクテルこそが、ティキバーのスタンダードであるべきであろう。
もしティキバーに立ち寄ったなら
ふらりとティキバーを名乗る店に入った時、もしもこのカクテルがメニューにあったならば、多少は信頼し得ると期待していただいて結構である。
ドン・ビーチの影響から、一般的なティキカクテルの定義のひとつとして、『ふんだんにラムを使うこと』といわれている。
確かに、使い過ぎの感あり。
《ゾンビー・カクテル》
-材料-
ホワイトラムx30ml
ゴールドラムx30ml
ダークラムx30ml
アプリコットブランデーx30ml
パイナップルジュースx30ml
ライムジュースx30ml
151proofラムx15ml
-作り方-
シェイカーにライムジュースまでを入れよくシェイクして、クラッシュドアイスを詰めた大型グラスに注ぐ。
最後に、151proofラムをフロートする。
このカクテルは。
強さの割にさっぱりした飲み口の良いカクテルで、現実逃避にはもってこいであるが、逃げすぎてゾンビーとならないことを願う。
ところで、このレシピは現在一般に知られたもののひとつであり、ニューヨーク万博に出展した当時のものとはまた別のようである。こんな薀蓄をネタに信頼のおけるバーでティキカクテルを楽しんでみてはいかがだろう。
(西宮聖一朗)
コラム「山田耕筰」イベント
「夕焼~け、小焼け~の、赤とんぼ~♪」
日本を代表する作曲家、山田耕筰。
僕も知らなかったのですが、茅ヶ崎の南湖に 一時期滞在していたことがあるらしいのです。
そこで、「赤とんぼの碑を立てる会」 なる企画がある地域で持ち上がりました。 その活動の一環で、ハスキーズ・ギャラリーにて、 山田耕筰の作品を中心に、毎月一回のコンサート が企画されました。
そこで僕は、山田耕筰の作品をテーマに、 オリジナルカクテルを作成して、提供することに なりました。
【現在の作品】
- 「赤とんぼ」
- 「ペチカ」
- 「からたちの花」
- 「この道」
- 「野ばら(ノンアルコール)」